フェルマーの最終定理
こんにちは。コンサルタントの赤股です。久し振りに数学の勉強をしました。今日はその話を。
連休中、暇潰しに近所の本屋へ行きました。
「フェルマーの最終定理」 サイモン・シン(新潮文庫)。
小さな本屋なのでとにかく本が少なくて、字が書いてあれば何でも良いという気持ちでこの本を購入したのです。
フェルマーの最終定理は誰でも知っている有名な定理。
「3 以上の自然数 n について、xのn乗+yのn乗=zのn乗 となる 0 でない自然数 (x, y, z) の組み合わせがない」
フェルマーは本の余白にこの定理を書き込んだ上で、「私はこの命題の真に驚くべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない」という言葉を残したそうです。
フェルマーの最終定理が証明されたのは、フェルマーがこの予想を発見したとされる1637年から360年近く時を経た1995年。天才数学者アンドリュー・ワイルズが20世紀の数学技法を駆使して漸く完全な証明が得られました。
本書は、アンドリュー・ワイルズを中心に、フェルマーの最終定理と数学者の4世紀に跨る格闘を描いた長編ドキュメンタリー。全く期待しなかったのですが、かなり面白く、一気に読み切りました。
この本が良いのは、数学的にかなり高度な話を、僕のような数学音痴でも楽しめるような内容に仕立てているところです。数学の理論的な話はすっ飛ばして、その背景にある物語だけが描かれています。それでも臨場感を失わない内容になっているのだから不思議です。
恐らくピタゴラスの定理が分かる程度の素養があれば楽しめるはず。
フェルマー自身はn=4の証明を自ら残していて(恐らくフェルマーが証明できたというのは、勘違いかハッタリでnが4の倍数の時成り立つこと位しか分かってなかったのだと思います)、100年後、オイラーがn=3で証明。その後n=5、n=7みたいな感じで少しずつ解決に向けて前進します。
素人的には帰納法を使えばこのまま証明できそうな気がしますが、実はそうではなく、こういうアプローチでは永遠に解決しないことが後になって分かります。
そこで1955年の谷山・志村予想が注目されたのです!
1984年、谷山・志村予想が正ならばフェルマー予想が正であることが予想され(フライ予想)、1986年、そのフライ予想が証明され、一気に解決の道筋が見え始めました。
ところが肝心の谷山・志村予想の証明が極めて困難だったようです。
(ちなみに谷山・志村予想とは、「すべての楕円曲線はモジュラーである」という予想)
そして1995年、アンドリュー・ワイルズは、谷山・志村予想の証明をおこなうことに成功して、フェルマーの最終定理の完全証明が完成することになります。
本書のクライマックスでゲーデルの不完全性定理が紹介されました。
「自然数論を含む帰納的に記述できる公理系が、ω無矛盾であれば、証明も反証もできない命題が存在する」
「自然数論を含む帰納的に記述できる公理系が、無矛盾であれば、自身の無矛盾性を証明できない」
フェルマーの最終定理は、ゲーデルの言う、「証明も反証もできない命題」なのではないか、とハラハラさせられるとともに、数学の奥深さに気が遠くなるような気持ちになりました。
この本を読んで、久し振りに数学を学びたくなりました。
中学生の頃にこの本に出会っていれば、違う人生を送っていたかもしれませんね。
日本の中高生に是非読んで欲しい1冊です。
<関連情報>
プライバシーマーク(Pマーク)に関心がある方はこちらへ
ISMS(ISO27001)に関心がある方はこちらへ